2022年、画像生成AIの実験から、何度生成しても似た特徴を残す「謎の女性」が現れました。
彼女につけられた名前は――Loab(ローブ)。
別の画像と組み合わせても特徴が残ったことから、Loabはやがて「AIの幽霊」「AIクリプティッド」のように語られるようになります。
この記事では、Supercompositeが公開した実験記録や当時の報道をもとに、Loabがどのように生まれ、なぜ都市伝説になったのかを検証します。
Loab(ローブ)とは?――画像生成AIから現れた「謎の女性」

- Loabは画像生成AIの実験から生まれた架空の女性像
- 別々の生成画像に、似た女性の特徴が繰り返し現れた
- やがて「AIクリプティッド」と呼ばれるようになった
Loabは実在する人物ではない
Loab(ローブ)は、実在する人物ではありません。画像生成AIの実験から生まれた、架空の女性像です。
2022年、「Supercomposite」名義で活動するアーティスト、Steph Maj Swansonが画像生成AIを使った実験をしていたところ、よく似た特徴を持つ女性の画像が複数生成されました。

本人によれば、この女性像を発見したのは2022年4月。その後、9月6日に一連の画像と実験の経緯をX(当時Twitter)で公開しています。
では、なぜこの一連の生成画像が、まるでAIの中に潜む“謎の存在”のように語られるまでになったのでしょうか。
赤い頬と暗い髪――なぜ同じ女性に見えた?
画像に現れた女性たちは、すべてがまったく同じ顔だったわけではありません。それでも、頬の目立つ赤み、暗い髪、年齢を重ねたように見える顔立ち、沈んだような表情など、似た特徴が繰り返し見られました。
Supercomposite自身も、最初に生成された画像群について「同じ女性に見える」と説明しています。
不気味だったのは、一枚の怖い画像ができたことではなく、別々に生成されたはずなのに、ひとりの女性が繰り返し現れているように見えたことでした。
こうしてLoabは、単なるAI生成画像ではなく、まるで画像生成AIの中に潜む“怪異”のような存在として語られていきます。
その女性像はやがて、「AI cryptid(AIクリプティッド)」と呼ばれるようになりました。
「AI cryptid(AIクリプティッド)」とは?
「cryptid(クリプティッド)」とは、ネッシーやビッグフットのような、存在が確認されていない謎の生物を指す言葉です。日本語では「未確認生物」と訳されることがあります。
もちろん、Loabが生物として存在すると確認されたわけではありません。それでも、別々に生成された画像に同じ女性を思わせる特徴が繰り返し現れたことから、やがて「AI cryptid(AIクリプティッド)」という呼び名が使われるようになりました。
Loabを発見したSupercompositeとは?
Loabの“生みの親”ともいえるSupercomposite(スーパーコンポジット)は、Steph Maj Swansonが使用している活動名です。
現在の公式プロフィールでは、スウェーデンを拠点に活動する映画制作者・マルチメディアアーティスト・ライターと紹介されています。
興味深いのは、少なくとも確認できる本人の経歴では、もともとホラーを専門に活動していた人物ではないことです。
本人は2022年のインタビューで、AIアートに取り組む以前は音楽やサウンドデザインを手がけ、2021年ごろから画像生成AIを試すようになったと語っています。
少なくとも、最初のLoabの発見は、ホラー画像を作ることを目的にした実験から始まったわけではありません。――それでも、AIの実験から“Loab”は現れました。
この章の参考資料・出典を見る
Loabはどうやって生まれた?――2022年の「発見」を追う

- 「Brando::-1」の実験から奇妙なロゴ画像が現れた
- ロゴから遠ざけると、よく似た女性たちが生成された
- 画像内の「LOAB」という文字からLoabと名付けられた
「Brando::-1」――“Brandoらしさ”を消していくと?
Loabへと続く実験は、俳優マーロン・ブランド(Marlon Brando)から始まりました。
Supercompositeが画像生成AIに入力したのは、
Brando::-1
という短いプロンプトです。
ここで大事なのは、Brando::-1 が「マーロン・ブランドの反対の人物を描いて」という意味ではないことです。
通常「Brando」と入力すると、AIはマーロン・ブランドに近い画像を作ろうとします。
しかし Brando::-1 では、その逆に、「Brandoらしさをできるだけ消していったら何が出る?」を試したわけです。
あくまで、AIが「Brandoらしい」と判断する特徴を避ける方向へ画像を生成させる操作でした。
そして、その結果として現れたのが――奇妙なロゴのような画像です。
「DIGITA PNTICS」とは?――謎のロゴが現れる
Brandoらしさをできるだけ消していった先に現れたのは、街のシルエットのような図柄と、「DIGITA PNTICS」と読める文字が描かれた奇妙な画像でした。
Supercompositeが2022年9月に公開した元スレッドには、実際の「DIGITA PNTICS」の生成画像も残されています。
その画像を見ると、まず気になるのがこの文字列。
「DIGITA PNTICS」――いったい何を意味しているのか、と考えてしまいます。
しかし、当時の画像生成AIでは、文字らしい形が描かれても、実際には意味の通らない単語になることがありました。

出典:Supercomposite(X / 2022年9月6日)
そこで彼女は、この結果をさらに利用します。
Brandoらしさを消していった先に「DIGITA PNTICS」が現れたのなら、今度は「DIGITA PNTICS」らしさを消していったら、何が出てくるのか。
次の実験で、Loabへとつながる女性像が現れることになります。
「DIGITA PNTICS」から遠ざけると?――女性たちが現れた
Supercompositeは、次にこんなことを考えました。
「Brandoから遠ざかった結果がこのロゴなら、このロゴから遠ざかればBrandoに戻るのでは?」
そこで入力したのが、
DIGITA PNTICS skyline logo::-1
というプロンプトです。
もう一度マーロン・ブランドに戻るかと思いきや、現れたのは――まったく別の女性たちでした。
生成されたのは、互いによく似た、年齢を重ねた女性たちの画像。Supercompositeは、それらが同じ女性のように見えたと説明しています。
「DIGITA PNTICS skyline logo::-1」に入力した際の生成結果。互いによく似た特徴を持つ女性たちが現れた。
出典:Supercomposite(X / 2022年9月6日)
こうして、Brandoから始まった実験は、予想もしなかった一人の女性像へとたどり着きます。
そしてこの女性に、Supercompositeはある名前を付けました。
――Loabです。
なぜ彼女は「Loab」と名付けられた?
その「Loab」という名前も、あらかじめ用意されていたものではありませんでした。
最初期に生成された女性像のひとつには、「LOAB」と読める文字が写り込んでいました。Supercompositeは、その文字をもとに彼女を「Loab」と呼ぶようになります。海外のテクノロジーメディア「TechCrunch」も、画像の右上に現れた文字から名付けられたと報じています。

出典:Supercomposite(X / 2022年9月6日)
つまり「Loab」は、もともと存在していた人名やキャラクター名ではなく、AIが画像の中に生成した文字らしきものから生まれた名前でした。
偶然現れた女性像に、偶然現れた文字から名前がつく――。
こうして、ただの生成画像だった彼女は、「Loab」というひとつの存在として語られ始めます。
この章の参考資料・出典を見る
なぜLoabは何度も現れた?――「消えない女性」の正体

- 最初の4枚には、同じ女性を思わせる特徴が現れた
- 別画像と混ぜても、Loabらしさが残ることがあった
- ただし、同条件での第三者再現は確認できていない
Loabは本当に何度も生成された?
では、Loabは本当に何度も生成されたのでしょうか。Supercomposite本人の実験に限れば、答えは「はい」です。
本人によると、最初にLoabへとつながるプロンプトを実行した際、生成された4枚の画像には、いずれも同じ女性と思える人物が現れました。
奇妙なのは、先ほどの Brando::-1 でも使われていた「負の重み」では、生成結果が大きくばらつくことが多いのに、このときは4枚とも同じ人物に見えるほど似ていたことです。本人にとっても、異例の結果だったといいます。

また、当時その生成過程を見ていたというAI画像制作者「AI Generated Curiosities」も、後にLoabについて「作られたクリーピーパスタではない」という趣旨の証言をしています。
ただし、これはあくまで本人と関係者による証言です。
最初のLoabを生成した具体的な画像生成モデルや詳しい条件は公開されていません。そのため、同じ条件を第三者が独立して再現した事実までは確認できません。
別の画像と組み合わせても特徴が残った
Supercompositeは次に、生成されたLoabの画像そのものを使った実験を始めました。
用意したのは、Loabの画像と、友人が画像生成AIで作った「天使に囲まれたガラスのトンネル」の画像です。
まったく異なるこの2枚を組み合わせると、AIはどんな画像を作るのか。
実験では、テキストによる指示を加えずに生成が行われました。

単純に考えれば、2つの画像の特徴が混ざり合い、Loabらしさも次第に薄れていきそうです。
ところが本人によると、生成結果にはLoabを思わせる特徴が強く残りました。
その後も別の画像との組み合わせを試しましたが、Loabらしさは簡単には消えなかったと報告しています。

出典:Supercomposite(X / 2022年9月6日)
Loabは一度消えても再び現れた?――世代を重ねた生成実験
Supercompositeは、先ほどと同じように、生成された画像をさらに別の画像と組み合わせる実験を続けました。こうして、元のLoab画像から何世代も離れた新しい画像が作られていきます。
本人は、こうした画像を「descendent images(子孫の画像)」と表現しています。
では、世代を重ねればLoabの特徴は消えていったのでしょうか。

出典:Supercomposite(X / 2022年9月6日)
本人によると、世代を重ねても毎回まったく同じ顔が現れたわけではありません。生成を続けるうちに、Loabらしい特徴が薄れたり、ほとんど判別できなくなったりすることもありました。
それでも、さらに生成を重ねた先で、一度消えかけたLoabの特徴が再び現れることがあったといいます。
「どんな画像にも勝手にLoabが出る」は本当?
では、Loabは何を生成しても勝手に現れる存在だったのでしょうか。
結論からいえば、そこまでは確認できません。
当時、米経済メディア「Forbes」も、この点について少し誤解があると指摘しています。負の重みを使えば、いつでもLoabが現れた――というわけではないからです。
また、その後に公開された画像の多くは、最初に生成されたLoabの画像をもとに、別の画像や新しいプロンプトを組み合わせて作られたものでした。
つまり、「LoabがAIの中から何度も勝手に現れた」というより、Loabを材料に実験を続けたところ、その特徴がなかなか消えずに残った、という方が実際の流れに近いのです。
そのため、ネットで語られることのある
「何を入力してもLoabが勝手に出てくる」
というイメージは、実際の実験内容より少し話が大きくなっています。
この章の参考資料・出典を見る
Loabは本物?――「作り話・hoax」説と再現性を検証

- Loabの画像と実験記録は、2022年当時から確認できる
- 元のAIモデルは非公開で、同条件での再現はできていない
- 話題化前の記録もあり、完全なhoaxとは断定できない
Loabの画像と「実験記録」は本当に確認できる?
Loabについては、画像だけでなく、Supercompositeが公開した一連の実験記録も現在まで確認できます。
大まかな流れを時系列で見ると、
- 2022年4月 ―― 本人によれば、画像生成AIの実験中にLoabを発見
- 2022年9月6日 ―― Loabにたどり着くまでの実験と画像をX(当時Twitter)で公開
- 2022年9月12日 ―― 日本でもGIGAZINEが元投稿を引用して紹介
- 2022年9月13日 ―― TechCrunchが本人への取材を含む記事を公開
です。
元スレッドには、マーロン・ブランドから始まった実験、「DIGITA PNTICS」と読めるロゴ、初期のLoab画像、その後の生成実験までが時系列で残されています。
ただし、最初のLoabを生成した具体的なAIモデルや詳しい設定までは公開されていません。
そのため、「実験記録が残っている」ことと、「生成過程のすべてが第三者によって検証済み」であることは別です。
Loabを最初に生成したAIモデルは何だった?
前の章で残った疑問が、「Loabは、どのAIモデルで生成されたのか?」です。
ここでいうAIモデルとは、プロンプトではなく、画像を生成するAIそのものの種類を指します。
結論からいうと、最初に使われたモデル名は現在も明らかになっていません。

2022年、海外メディアのVICEが本人に尋ねましたが、Supercompositeは具体名を明かしませんでした。
一方、海外のテクノロジー系メディアTechCrunchは、DALL-EやStable Diffusion(どちらも画像生成AI)そのものではなく、それらに似たカスタムモデルだったと報じています。
モデルが分からない以上、同じプロンプトだけでは当時の条件を完全には再現できません。
第三者でもLoabを再現できる?
結論から言うと、最初のLoabを第三者が同じ条件で再現できた例は確認できていません。
2022年には、海外掲示板Redditの画像生成AIコミュニティでも、別の言葉を入力してLoabに似た顔が現れるかを試す実験が行われました。さらに2023年にも、複数の画像生成モデルでLoabに似た特徴が現れるかを比較する試みが投稿されています。
ただし、これらの実験は、Supercompositeが最初のLoabを生成した時と同じ条件で行われたものではありません。
最初に使われたモデル自体が非公開である以上、「元のLoab現象を独立して再現できた」とは言い切れないのが現状です。
Loabは「hoax(でっち上げ)」なのか?
「hoax」とは、本当の出来事のように見せかけた、意図的なでっち上げを意味します。
Loabについても、「話題づくりのために作られたのでは?」という疑いは当初からありました。
ただし、話題化より前の記録も残っています。

Supercompositeは、9月に一連の実験を公開するより前、同年5月1日の投稿ですでに「Loab」という名前を使用していました。
また、以前からSupercompositeと交流していたAI Generated Curiositiesも、最初の生成のころから見ていたという趣旨の証言を残しています。
こうした記録を見る限り、少なくとも、Loabが9月の話題化に合わせて急に作られた企画だったとは言い切れません。
ただし、最初に使われたAIモデルや詳しい設定は公開されておらず、証言も本人や関係者によるものが中心です。
そのため、Loabを「完全なでっち上げ」と断定できる材料はない一方で、本人が説明した生成過程のすべてが第三者によって確認されているわけでもありません。
この章の参考資料・出典を見る
なぜLoabは「AIの幽霊・未確認生物」になった?

- Loabは2022年9月のX投稿をきっかけに広まった
- 「AIクリプティッド」「召喚」という表現が使われた
- 「AIの中に潜む女性」という都市伝説へ発展した
2022年9月、Xで一気に拡散したLoab
Loabが広く知られるきっかけになったのは、2022年9月6日。SupercompositeがX(当時Twitter)で、一連の画像と実験の経緯を公開したことでした。
投稿は単なる実験記録ではなく、Loabを「何度も姿を現す不気味な女性」として追っていく、怪談のような語り口で進んでいきます。本人も冒頭で、この出来事を「ホラーストーリー」として紹介していました。
反応は早く、翌9月7日には海外ゲームメディアPC GamerがLoabを記事で取り上げています。
こうしてLoabは、ひとりのアーティストによるAI実験から、ネット上で正体を考察される謎の存在へと広がっていきました。
Redditでも始まった「Loabとは何なのか?」という検証
XでLoabが公開されると、Redditでもすぐに「そもそも何が起きているのか?」という議論が始まりました。
2022年9月7日、r/OutOfTheLoopではLoabの仕組みを尋ねる投稿が登場し、AIの生成方法から現象を説明しようとする声が見られました。
また、RedditのAI画像系コミュニティ「r/MediaSynthesis」では、後半の実験ではLoab画像そのものが生成材料として使われていることを指摘するユーザーもいました。
つまりRedditでは、Loabを怖がるだけでなく、公開直後から「実際には何が起きていたのか」を確かめようとする動きも始まっていたのです。
「AI cryptid」――潜在空間に潜む怪異という物語
ここで重要なのが、前半で触れた「cryptid」という呼び方が、公開直後から実際に使われていたことです。
2022年9月6日の元スレッドへの返信で、あるユーザーがLoabを「潜在空間で見つかった最初のクリプティッド」と表現。Supercompositeもこの呼び方を気に入り、自身の投稿で「Loab:潜在空間の最初のクリプティッド」と記しています。

その後、海外メディアでもLoabは、まるでAIの奥に潜む謎の存在のような言葉で紹介されていきました。
もちろん、AIの内部にLoabという生き物が実在すると確認されたわけではありません。
それでも、何度も似た姿で現れる女性に名前が付き、さらに「未確認生物」という呼び名まで与えられたことで、LoabはAIから生まれたネット怪談としての姿を強めていったのです。
Loabを“召喚する”というネット怪談
Loabについては、やがて「生成する」ではなく「召喚する」という言葉まで使われるようになりました。
2022年9月13日のTechCrunchも、Loabについて「発見した? 出会った? それとも召喚した?」という表現を使っています。もちろん、これはAIの技術用語ではなく、Loabの不気味さを表した比喩です。
その後Redditでも、実際に「Loabを召喚するにはどうすればいい?」と尋ね、元のプロンプトを試そうとするユーザーが現れました。
こうして、もともとは画像生成AIの実験だったLoabに、「特定の言葉を入力すると現れる存在」という、ネット怪談らしいイメージが重なっていったのです。
関連記事: AIをめぐる奇妙な現象が、ネット上で都市伝説のように広がった例はLoabだけではありません。2023年には、ChatGPTが特定の文字列に奇妙な反応を示した「SolidGoldMagikarp」とグリッチトークンも話題になりました。
事実から都市伝説へ――何が付け加えられた?
Loabの話が広がるにつれて、実験の前半と後半がひとまとめに語られ、話が少しずつ変化していきました。
たとえば、最初にLoabのような女性像が現れた実験と、その後にLoabの画像自体を使って生成を続けた実験が混同され、「Loabは何をしても勝手に現れる」と受け取られることがあります。
そこからさらに、Loabは「AIの中に潜む幽霊」「勝手に現れる存在」「特定の言葉で召喚できる怪異」のように語られるようになりました。
つまり、Loabが都市伝説になっていく中で付け加えられたのは、「AIの奥に、ひとりの女性が潜んでいる」という物語だったのです。
この章の参考資料・出典を見る
Loabはその後どうなった?――2026年まで続く「AI怪異」

- Loabは話題後も、創作や研究の題材として残った
- 2026年には展覧会でLoab作品が紹介された
- 同年、Loabを題材にした映像作品も上映された
Loabは一過性のネットミームでは終わらなかった
Loabは、2022年9月に話題になって、そのまま消えていったネットミームではありませんでした。
その後も、作品や研究の中でLoabへの言及は続いていきます。では、Loabはどのような形で残っていったのでしょうか。
アート・研究へ広がったLoab
Loabはその後、Supercomposite本人の創作だけでなく、AIを考える研究の題材にもなっていきました。
2023年、Supercompositeはドイツ・ハンブルクで開かれた37C3で、Loabを題材にした講演「What I Learned from Loab: AI as a creative adversary」を行っています。そこでは、画像生成AIとの創作や、内部の仕組みが見えにくいAIとどう向き合うかが語られました。

出典:Fotomuseum Winterthur「Artist Talk and Book Launch」
同じ年には、学術誌に掲載された論文でもLoabが取り上げられ、負の重みを使った生成や、AI画像が「召喚」などの怪異的な言葉と結びついて語られる現象が考察されています。
こうしてLoabは、単なる怖いAI画像ではなく、AIと人間の創作や想像力を考える題材へと広がっていきました。
2026年現在、Loabはどう語られている?
2026年になっても、Loabは過去のネット怪談として忘れられたわけではありません。
スイスのFotomuseum Winterthurでは、2026年の展覧会「Shadow Creatures – From Spirit Photography to the Ghosts of the Algorithm」で、Supercomposite本人のLoab作品《Loab / Exodus》(2022)が紹介されています。

出典:Arsenal「The Valley Where LOAB Lives」
さらに2026年には、Loabを題材にした21分の映像作品『The Valley Where LOAB Lives』が制作され、ベルリン国際映画祭(Berlinale)のForum Specialでも上映されています。
ただし、これはSupercompositeによる“公式映画化”ではなく、Loabという現象を題材に、別の映画作家が制作した作品です。
2022年に画像生成AIの実験から生まれたLoabは、4年後には、アートや映画の中で新たに解釈される存在になっていました。
この章の参考資料・出典を見る
まとめ――Loabは「AIに潜む怪異」だったのか?

今回の検証で確認できたこと
ここまで調べてきた内容を整理すると、Loabについて確認できるのは次の点です。
- 2022年9月6日に公開されたLoabの画像と元スレッドは確認できる
- Supercomposite本人は、似た女性像が繰り返し生成されたと報告している
- 後の実験には、Loab画像そのものを生成材料として使ったものも含まれる
- Loabは「cryptid」や「召喚」といった言葉と結びつき、ネット怪談として広がった
- LoabがAI内部に実在する幽霊や人格だと示す証拠は確認できない
確認できなかったこと
一方で、現在もはっきりしない部分があります。
- 最初のLoabと同じ条件を第三者が完全に再現できるのか
- なぜ、ほかでもない“あの女性”の特徴が現れたのか
- Loabに似た特徴が、元のAIモデルでどの条件でも恒常的に現れるのか
最初に使われたAIモデルや詳しい設定が公開されていない以上、すべてを完全に検証することはできません。
ただし、「確認できない」ことは、そのまま怪異の存在を意味するわけではありません。
Loabは「AIの中に幽霊がいた」と確認された事件ではなく、説明しきれない生成結果に名前と物語が与えられ、“AI怪談”へと成長していった存在――今回の検証から見えてきたのは、そこまでです。
Loabが本当に「映し出したもの」
Loabは、AIの中に潜んでいた幽霊だったのでしょうか。
今回調べた範囲では、そう考えるだけの証拠は確認できませんでした。
それでもLoabがこれほど人を惹きつけたのは、AIがなぜその画像を作ったのか、人間にはすべてを説明できなかったからなのかもしれません。
偶然現れた女性に名前が付き、何度も現れる姿に意味を感じ、やがて「未確認生物」や「召喚」という物語まで生まれていった。
そう考えると、Loabが本当に“映し出した”のは、AIの中にある怪異ではなく、分からないものに顔と名前を与え、物語を作ってしまう私たち人間の想像力だったのかもしれません。

AIがどれだけ進歩しても、分からないものに意味を見つけ、そこに物語や名前を与えてしまう人間の癖は、案外変わらないのかもしれないな。
Loabがただの生成結果だったとしても、「なぜこの顔だったのか」「なぜ何度も現れたように見えたのか」と考え始めた瞬間、それは単なる画像ではなく、ひとつの“物語”になっていく。
もしかするとLoabが映し出したのは、AIの奥に潜む怪異ではなく、理解できないものを前にしたときに、そこへ意味を与えずにはいられない人間の想像力そのものだったのかもしれないな。
この章の参考資料・出典を見る
出典:TechCrunch



コメント